2023.08.31 お知らせ
図書館通信 HP5
こんにちは。図書館です。「図書館通信・夏号」は読んでいただけましたか?
内容は新着図書の紹介が中心でしたので、今回は既に購入している本を対象に、司書さん方にオススメ本を紹介してもらいました。
合わせて司書さん方に「皆さんにとって、読書とは何ですか」といういささか大雑把な質問をしてみました。
本のプロである司書さん方にとって読書とはどんなものなのか、興味ありませんか?
今回紹介してもらった本は、全て図書館にあります。
A司書
読書とは・・・壮大なタイムマシンに乗り込むということです。
読書をすることで、人は過去や未来に自由に旅が出来ます。また今と別な時代に身を置いて新たな出会いをし、違う人生の選択も可能です。
本来は絶対に変えることの許されない歴史ですが、タイムマシンに乗り旅をしながら、自分が書き手となって新たな時代物語を完成させることを空想すると心が弾みませんか。
是非皆さんもタイムマシンに乗ってみてください。
オススメ本・・・今年5月に旅をした岩手県、遠野市にちなんだ『遠野物語』・柳田国男著・角川文庫を紹介します。
遠野には「座敷わらし」や「河童」、「雪女」、馬と結婚して人間から神様になった「おしら様」などの伝承が数多く残っています。それらの言い伝えをまとめた書です。遠野は昔からずっと、妖怪たちに会うことが出来る不思議な空気に満ちあふれた土地です。
残暑厳しい夜など、この書を読んで妖しの世界に涼感を求めてみてはどうでしょうか。
O司書
読書とは・・・「食事」みたいなもの、です。
好きな味や美味しいものは何回でも食べたいと思うように、好きな物語を繰り返し読んだり、気に入った作家の本を続けて読んだり、また新しい美味しさ(=面白さや感動)を求めて、いろいろな情報を集めたり、お店に探しに行ってみたり。なかなか咀嚼できなくて飲み込むのに時間がかかるものもあれば、身体のため(=知識を得るためや仕事に役立てるため)になるからと好き嫌いにかかわらず摂取するものがあるところも似ています。読むことで身体に取り込んで自分の一部になっている感じです。口に合わないものもあるし、丁寧に作られた素晴らしいものに出会うこともあれば、素材や味付けがおかしなものを見つけることもあります。
皆さんにも、自分で選んでたくさん味わって(読んで)みてほしいです。考えたり表現したりするときの力になってくれるはずです。
オススメ本・・・『COCOON コクーン』・今日マチ子著・秋田書店
沖縄ひめゆり学徒隊に着想を得て、少女たちの視点から戦争を描いた作者のオリジナルストーリーです。日常から戦争へと巻き込まれていく逃れようのない恐ろしさ、人が理不尽に死んでいく戦争のリアル。柔らかく繊細な線で描かれ、夢の世界を見ているようでもありますが、分かったつもりで目をそむけてしまいがちな戦争の悲惨さや残酷さも漫画だから読み切れる、伝わってくると思います。
日本では夏になると「二度と繰り返してはならない」と、過去の戦争について語られる機会が増えますが、現実におきている戦争について毎日のようにニュースを見聞きする今、ぜひ読んでほしい作品です。
※コミックは貸出が出来ませんが、館内で読んでくださいね。
N司書
読書とは・・・どこでもドアである。
現在、過去、未来、時を越えて色々な場所で、様々な体験ができます。
オススメ本・・・『葡萄が目にしみる』・林真理子著・角川文庫
この小説の主人公は、地方の葡萄農家で育ち東京に憧れる高校生、乃里子である。華やかさとはほど遠い印象の少女だ。受験、恋、部活・・・友人との行き違いや葛藤、かすかな憎しみ。
1980年代に書かれた作品だが少しも色褪せていない。2023年、現役高校生にも共感する内容が詰まっているおすすめの一冊。著者の長編小説を読むのは初めてであったが、とても面白く表現の細やかさに引き込まれていった。また自分の青春時代にタイムスリップした気持ちになり、ラストは時の流れが作り出した縁に・・・心地よい余韻がしばらく止まらなかった。
O司書
読書とは・・・魔法のパスポートのようなものだと思っています。
理由を申しますと、読書しているうちに、本が私の知らない異世界への扉を開いてくれて、私の知らない異世界へ連れて行ってくれるからです。マンガやアニメやゲームやスマートフォンの動画を見るのは本当に面白くて楽しいですが、私の場合はやっぱり読書が一番だなあと思っています。
オススメ本・・・『認知症世界の歩き方』・筧裕介著・ライツ社
私は子ども時代に認知症の祖母と暮らした経験があるのですが、当時は認知症、ヤングケアラー、高齢者虐待等という言葉はまだ一般的ではありませんでした。今回ご紹介するような本の知識が私にあれば、祖母の心や祖母がどんな事に困っていたかを、理解しやすかっただろうと思います。
この本では、認知症の方が、困っていることを周りの方に助けてもらいながら克服しようとする姿や、認知症の方の目に映る物事や景色がとても分かりやすく説明されています。ご興味のある方はぜひ手にお取りください。
A司書
読書とは・・・知らない世界の扉を開けてくれる存在です。
私が幼い頃は携帯やPCのような機器はなく、テレビや本などを通して情報を得る時代でした。そんな私にとって本が見せてくれる様々な世界は、ワクワクや驚きなどいろんな発見や一歩踏み出す勇気を与えてくれました。
ワクワクを探している人、背中を押してくれる何かを求めている方、ぜひ図書館に来てみてください! 新しい発見があるかも?!
オススメ本・・・『赤と青とエスキース』・青山美智子著・PHP研究所
メルボルンの若手画家が描いた一枚の絵画「エスキース」。このエスキースをめぐり出会いと別れの切ない恋心や師弟との信頼関係など愛に溢れる5編の連作短編集です。ところで、「エスキース」とは一体何でしょうか?エスキースとはフランス語で“esquisse”といい、”スケッチ“や”下絵“のことを表します。物語を読み進めていくと、まるで下絵が完成に向かっていくような展開と仕掛けに驚き、大切な人を大事にしたくなるような気持ちになる一冊でした。心温まりたい方、2度読みしたくなるような展開の作品を読みたい方におすすめの一冊です!
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いかがでした?司書の方々が読書という行為をどう捉えているのか面白いですね。共感できる考え方、ありましたか?
5名の司書さん方が、揃って比喩を用いて答えてくれました。もちろん事前の打ち合わせなどありません。
でも、このような質問に対しては比喩を用いる以外答えようが無いのかもしれません。特に他者に理解してもらいたい場合においては。
読書についての思いもそれぞれ、紹介された本のジャンルもそれぞれ。多様性と可能性そして想像を通して新たな創造へと繋がるのが本の世界です。知らずに過ごしたのではもったいない!
2学期からも図書館を大いに活用してください。良い人生を送るには良い習慣が大切。「読書の習慣化」は豊かな人生の一助となるはずです。