2026.06.04 Teacher's Voice-鶴高の先生にインタビュー
【Teacher's Voice】鶴高の先生にインタビュー#4【数学科 大舘先生】
「知的好奇心が、震える瞬間を」
― 数学を超えて、学びを楽しむということ ―
数学科・大舘先生インタビュー
日大鶴ヶ丘高校の先生方の言葉や教育観をお届けする広報部企画「Teacher’s Voice」。
第4回にご登場いただくのは、数学科の大舘先生です。
数学科教員として授業を担当する一方で、大学数学の先取り講座を立ち上げ、ICT分野にも強く、生徒たちからは「面白い先生」として絶大な人気を誇る存在。
その“面白さ”の奥には、「学ぶことを楽しんでほしい」という真摯な願いがあります。

“勉強”を、ただの義務ではなく、“夢中になれるもの”として捉える大舘先生のTeacher’s Voiceをお届けします。
取材:広報担当Q
▶「数学の先生」というより、“パフォーマー”だった
大舘先生の出発点は、実は「数学」ではなく、「人前でのパフォーマンス」。
軽音部でギターを弾き、ライブに立ち、大学では漫才大会にも出場。小さな大会ながら優勝経験まであるというから驚きです。
「人前で何かを表現することが好きだったんですよね。ミュージシャンも、お笑い芸人も、教員も、“大衆に向けてパフォーマンスする仕事”という意味では、自分の中で繋がっている感覚があります」
また大学時代には、厚生労働省関連の支援活動にも携わっていたそうです。
主に中学生に向けて、高校進学を支援する学習サポートを行う中で、“人に何かを教える”ことの面白さにも出会いました。
数学。
パフォーマンス。
人との関わり。
その全部が、今の大舘先生につながっています。
▶数学は、なぞなぞだ
大舘先生には、「数学を極めたいから数学教師になった」というイメージを持っている人も多いかもしれません。
実際、先生の机には数学書がずらりと並び、大学数学の研究も現在進行形で続けています。けれど本人は、さらりと言います。
「数学は、趣味ですね」
“仕事だからやる”ではなく、“好きだから触れている”。
その感覚が、授業の空気にも表れているように思います。
鶴高生について尋ねると、「数学に苦手意識を持っている子は多い」としながらも、こんな言葉が返ってきました。
「でも、能力的には全然問題ないと思っています。
私は、9割くらいの子が理系に進んでも大丈夫だと思っています」
数学という教科に対して、「できる・できない」だけではない視点を持っているのが、大舘先生らしさです。
「数学って、他の学問より“なぞなぞ”に近いと思うんです。
だから、“勉強”というより、“遊び”に近い感覚で楽しめるとも思います」
大舘先生の数学の授業には、“温度”があります。
「授業中眠そうな生徒もいますけど、面白い話を始めると起きます(笑)」
その言葉に、教室の光景が浮かびました。
▶ 授業は「落語」、ホームルームは「劇場」
大舘先生は、授業を「落語」に近い感覚だと話します。
「ある程度、話す内容は決まっているんです。でも、それをどう話すかで全然違う。
落語って、同じ演目でも話し手によって面白さが変わるじゃないですか。授業も近い感覚があります」
だからこそ、日々“ネタ”も探しています。
インタビューした日の授業では、「点と直線の距離」という単元を扱ったそうです。その際に、
「“点と直線の距離”。なんか哲学っぽいタイトルですよね(笑)アニメの新作のような…」と笑いを挟んだ大舘先生。
こうした小さな笑いが、教室の空気をやわらかくしていきます。
▶ザリガニは、エビなのか?カニなのか?
けれど、大舘先生が大切にしているのは、“ただ面白い”ことではありません。
「笑いって、すごく大事だと思っているんです」
その背景には、“全員参加”への強い思いがあります。
教員1年目、ロングホームルームで「体育祭のスローガン」を決めた日のことを、大舘先生は今でも鮮明に覚えているそうです。
話し合いは、いつの間にか“大喜利大会”のようになり、最終的に決まったスローガンは――
「ザリガニはエビなのか、カニなのか」
思わず吹き出してしまうようなタイトルですが、その議論のすえ導き出されたのは、こんな素敵な結論でした。
「ザリガニが“自分はエビだ”と言うならエビでいいし、“カニだ”と思うならカニでいい。周りが決めることじゃない」
「めちゃくちゃな時間だったんですけど(笑)。
でも、あれが教員人生で見てきた中で、一番“全員が参加した時間”だった気がします」
ふざけているようで、本質的。
笑いながら、生徒たちはちゃんと考えている。
それが、大舘先生の教室です。
▶ 「つまらない」も、大事な収穫
現在、大舘先生は有志生徒向けに「大学数学先取り講座」を開講しています。
高校のカリキュラムを超えて、大学レベルの数学や暗号理論、情報数学などに触れる講座です。
その立ち上げには、付属校だからこその思いがありました。
「せっかく時間的な余裕があるなら、“その先”を見せたいなと思ったんです」
特に印象的だったのは、先生のこんな言葉でした。
「“つまらない”と思うのも、大事な収穫なんですよね」
理工学部に向いているかどうか。
本当にその分野を好きになれるかどうか。
実際に触れてみないと、わからないことがあります。
「初日だけ来て、次から来ない子も全然います。でも、それも正解だと思っています」
また驚いたのは、大舘先生自身も今、大学で科目等履修生として学び続けていることでした。
「習い事みたいな感覚なんですよね。純粋に楽しくて続けています」
“教える側”でありながら、“学ぶ側”でもあり続ける。
その姿勢そのものが、「学ぶことは本来楽しいもの」というメッセージになっているように感じました。
“好き”も、“違うかも”も、どちらも価値のある気づき。
だからこそ先生は、生徒たちに“本物”を見せようとしています。
▶ 「目的がなくても、世界は広がる」
現在、大舘先生は、
昨年、
その下見隊として、
「実は、昔はちょっと斜に構えていた部分もあったんです」
そう笑いながら、大舘先生は率直に語ってくれました。
理系分野、とくに数学や科学教育において、
大学レベルの内容でも、
だからこそ以前は、
“わざわざ海外に行かなくても、日本で学べるのではないか”
そんな思いもあったそうです。
けれど実際に現地を訪れ、その考えは大きく変わりました。
「もちろん、“学問だけ”を見るなら、
文化。
価値観。
マナー。
空気感。
日本では“当たり前”だと思っていたことが、
逆に、日本の良さに気づく瞬間もある。
「“目的が明確じゃない海外経験って意味あるのかな”
ただ現地で生活してみるだけでも、
その言葉は、とても印象的でした。
“何を学ぶか”だけではなく、“どんな世界に触れるか”。
それもまた、大切な学びなのだと。
「だから修学旅行も、“ただ楽しかった”
理系らしい論理性を持ちながら、同時に、
そんな大舘先生らしさが、修学旅行への言葉にも表れていました。
☆鶴高の修学旅行、海外コースに関する記事はこちら!(R7年度のもの)
▶「学ぶことを楽しめる学校」にしたい
最後に、「鶴高をどんな学校にしたいですか?」と尋ねると、大舘先生は少し考えて、こう答えました。
「学ぶことを楽しめる学校、ですかね」
そして、こんな言葉が続きます。
「大人になってから実感しますけど、勉強って、楽しいじゃないですか。
同時に、“勉強はつまらないもの”というふうにしてしまっているのも、学校なのかなって思うことがあって」
教科書の中には、何千年も積み重ねられてきた人類の知があります。
命をかけて真理を追い求めた人たちがいて、その先に今の“学び”があります。
日々高校生が向かい合うページの中には、何を犠牲にしてでも知りたい!と先人たちが夢中になったものが詰まっています。
知りたい、の根源にあるのは「楽しい」のはず。
「本当は、“やらされるもの”じゃなくて、“夢中になるもの”なんですよね」
それぞれの「夢中」を見つけられる学校を作りたい。そんな大舘先生の思いに触れました。
▶中学生へのメッセージ
「鶴高は、いい意味でサポートが手厚い学校です。
だから、やるべきことにはちゃんと向き合ってもらいます。補習もしますし、指導もします(笑)。
でもその上で、自分の好きなことや、新しい世界に挑戦できる学校でもあります。
規律を大事にしながら、自分と向き合う時間を持てる。
そんな高校生活を送りたい人には、すごく合う学校だと思います。
待っています。
鶴高で、逢いましょう。」

▶編集後記
インタビュー中、何度も笑わせていただきました。
けれど、その笑いの奥には、いつも「全員を置いていかない」という優しさがありました。
“面白い先生”という言葉だけでは足りません。
人間の、生徒たちの知的好奇心を本気で信じ、「学ぶって、本当は面白いんだよ」と伝え続けている先生でした。
数学が好きな人も、少し苦手な人も。
きっと大舘先生の授業には、「ちょっと聞いてみたい」が生まれるはずです。
そしてそれは、鶴高という学校の空気そのものなのかもしれません。
※大舘先生が見せてくれた、とっておきのネタ。数学の「準同型定理」を、“お笑い”にたとえた数学ジョーク。
「お笑いを数学に変換すると、細かいニュアンスは消え、
数学者の“なんでも数式化したがる性質”をネタにしています。
