【Teacher's Voice】鶴高の先生にインタビュー#2【国語科・図書主任 中根先生】
「あなたの悩みは、もう本の中にある。」中根先生が語る、国語と図書館の魅力
▷広報部がお届けする専任教員インタビューリレー企画「Teacher’s Voice」。第2弾は、国語科教諭であり、図書主任として鶴ヶ丘高校の図書館づくりを支える中根先生です。

生徒たちからは「図書館の先生」として親しまれ、穏やかな語り口の中に深い思索を感じさせる中根先生。今回のインタビューでは、「なぜ国語教師になったのか」という原点から、図書館をどんな場所にしたいのか、そして“悩み”との向き合い方まで、たっぷりと語っていただきました。
静かな言葉の一つひとつに、人を安心させる力がありました。広報担当(以下、Q)がお話を伺いました。
▶「人の心」に触れたかった――国語教師を選んだ理由
Q:本日はよろしくお願いします!まず、中根先生が国語の先生になろうと思ったきっかけを教えてください。
中根先生:
こちらこそよろしくお願いいたします。
そうですね……実は「絶対に教師になりたい」というような強い原体験があったわけではないんです。ただ、自分の中で一番興味があった教科が国語だった、ということに尽きるかもしれません。
もともと文系でしたので、理系には少し苦手意識がありました。進路を考えた時に、歴史か国語かで迷ったんですね。
ただ、最終的には「人の心の中に踏み込んでいく」という点で、国語に強く惹かれました。文学作品には、人の感情や弱さ、迷い、生き方が描かれています。そういうものに昔から興味があったんです。
Q:「人の心に踏み込んでいく」という言葉がとても印象的です。
中根先生:
今でこそ心理学など様々な学問がありますが、私たちの頃はそこまで視野が広がっていなかったんですね。だから、「人間の心を知る」という意味では、文学が一番近い存在だったのかもしれません。
Q:中根先生は古典をご担当されることが多い印象があります。古典って、生徒からすると「遠い昔の難しい話」と感じられがちですが、実際にはすごく人間らしい感情が描かれていますよね。
中根先生:
そうなんです。古典にも、現代と変わらない感情がたくさん描かれています。恋愛、人間関係、嫉妬、憧れ、不安……驚くほど「今の私たち」と共通している部分があるんですね。
ただ、授業ではどうしても文法や古文単語に意識が向きやすい。生徒たちもまずはそこを頑張らなければいけないので、「人の心」にまで辿り着けないこともあります。それは教える側の責任でもあると思っています。
でも、よくよく読んでみると、現代と共通する部分もあれば、「社会によって人の心はこんなにも変わるのか」と驚かされることもあります。
古典というのは、今の自分たちを客観的に見つめ直す材料を与えてくれるものなんです。
▶コロナ禍の図書館で考えた、「居場所」ということ
Q:今の鶴ヶ丘で、「中根先生といえば図書館」というイメージを持つ生徒はかなり多いと思います。図書主任になられて、どれくらい経ちますか?
中根先生:
ちょうどコロナ禍の頃に担当になりましたので、もう6〜7年ほどになりますね。学校全体が不安の中にあった時期でした。
Q:先生が発行されている「図書館だより」がとても印象に残っています。特にコロナ禍では、「こういう時こそ本の世界へ」というメッセージを発信されていましたよね。
中根先生:
ありがとうございます。あの頃は、生徒たちも私たち教員も、先が見えない感覚を抱えていましたからね。
そんな中で、図書館という場所が少しでも安心できる場所になればいいなと思っていました。
Q:中根先生が図書館運営で大切にされていることは何ですか?
中根先生:
まず一番は、「生徒たちの居場所であってほしい」ということですね。
教室があり、部活動があり、生徒会室があり……学校には様々な居場所があります。その中の一つとして、「図書館」があってほしいんです。
子どもたちが学校の中で複数の居場所を持っていることは、とても大切なことだと思っています。
それからもう一つは、授業や学校行事を支える場所であることですね。
例えば修学旅行前には、行き先に関する本を集めて特集を組みます。芸術鑑賞会の前には、演劇や音楽に関する展示をすることもあります。
図書館が学校生活と自然につながる場所になればいいなと思っています。
▶「本を読まなくてもいい」図書館という空間
Q:図書館って、「本を読む場所」「静かに勉強する場所」というイメージを持っている生徒も多いと思います。
中根先生:
昔は私もそう考えていました。何か調べたいことがあるから行く、本を借りるために行く、という場所ですよね。
でも最近は、世の中の図書館や本屋さんも変わってきています。コーヒーを飲みながら過ごせる図書館や、ただ本に囲まれて時間を過ごせる空間も増えてきました。
だから鶴ヶ丘の図書館も、もっと気軽に使ってもらっていいと思っています。
活字が苦手なら写真集でもいい。本の背表紙を眺めるだけでもいい。ただぼーっと過ごすだけでもいいんです。
Q:「背表紙を見るだけでもいい」という言葉が、とても印象的でした。
中根先生:
司書の方々が、本の表紙が見えるように工夫して展示してくださっているんです。最近は「ブックカフェ」のような感覚に近いかもしれませんね。
幸い、鶴ヶ丘の図書館は飲み物の持ち込みもできます。好きな飲み物を持ってきて、静かな空間で過ごしてみる。そういう時間も大事だと思います。

Q:今、図書館の奥でお話を伺っていますが、本当に落ち着く空間ですね。私、今日ここでお話を聞いていて、「もし近所にこんな場所があったら、日記を書きに来るだろうな」って思ったんです。窓から光が入って、静かで、本に囲まれていて。手紙を書いたり、自分の考えを整理したりするのにも、すごく合う空間だなって。
中根先生:
そうですね。図書館というのは、「本を読む場所」でもありますけれど、それだけではないと思うんです。
本に囲まれて過ごすことで、自分自身の考えを整理したり、気持ちを落ち着けたりすることもできますからね。
鶴ヶ丘の図書館には、大きな机もありますし、個別の席もあります。試験前には勉強で利用する生徒も多いですが、例えば日記を書くとか、手紙を書くとか、自分と向き合う時間を過ごす場所として使ってもらうのも、とてもいいことだと思います。
Q:なるほど……。「本を読む場所」というより、「心を整えに来る場所」にもなりうるんですね。
中根先生:
そうかもしれませんね。
山が好きな人は山へ行く。海が好きな人は海を見る。それと同じように、図書館という空間に安心感を覚える人もいると思うんです。
本の世界に触れることで、自分の気持ちを少し客観的に見られるようになることもありますし、逆に、ただ本に囲まれているだけで落ち着くということもありますから。
Q:なんだか、「自分の心に出会い直す場所」みたいですね。
中根先生:
ええ、そんな場所になれたら嬉しいですね。
▶「あなたの悩みは、もう本の中にある」
Q:例えば生徒が、「最近ちょっと落ち込んでいて……」みたいな相談を図書館でするのもありなんですか?
中根先生:
もちろんです。司書の方々も、そういう生徒が来てくれるのを待っていると思いますよ。
「最近元気が出ない」とか、「こういうことで悩んでいる」とか、漠然とした相談でもいいんです。「何かおすすめありますか?」と聞いてくれれば、きっと本を紹介してくださると思います。
Q:それって、“処方箋”みたいですね。
中根先生:
以前、とても印象的な言葉を目にしたことがありましてね。
「あなたの悩みは、もう本の中にある。」
私は本当に素晴らしい言葉だと思っています。人類は長い時間の中で、同じようなことで悩み、迷い、考えてきましたから。
Q:すごく胸に響きます。
中根先生:
ただ、本を読んだから悩みが消える、というわけではないんですよね。
でも、悩みと“ほどほどの距離”を取ることはできると思うんです。少し呼吸がしやすくなる。少しだけ客観的になれる。
それが本だけでなく、音楽でも、映画でも、絵でもいい。人にはそれぞれ、自分を少し支えてくれるものがあるんじゃないでしょうか。
Q:「悩みを消す」のではなく、「悩みと付き合う」という感覚なんですね。
中根先生:
そうですね。悩みがゼロの人なんて、きっといませんから。
大事なのは、悩みに飲み込まれすぎないことだと思います。
ふと「自分は今、悩んでいるんだな」と少し冷静に見つめる。それだけでも、少し変わることがありますからね。
▶国語と図書館。その共通点とは
Q:国語の先生であることと、図書館運営には、どこか共通点がありますか?
中根先生:
難しい質問ですね(笑)。ただ、図書館というのは、一人で作るものではないと思っています。
司書の先生方がいて、数学や英語の先生方も関わってくださっていますし、他の先生方からも「こんな本を入れてほしい」というリクエストをいただきます。
だから、「国語科だからこう」という意識は、実はあまりないんです。
ただ、自分の視野なんて本当に狭いものです。だからこそ、いろんな立場の人の視点を借りながら、「今の鶴高生には何が必要だろう」と考えていくことが大切なのかなと思っています。
▶ 中学生へのメッセージ
Q:最後に、鶴ヶ丘を目指す中学生へメッセージをお願いします!
中根先生:
ぜひ、たくさんの「好き」を持ってください。
部活動でも、生徒会でも、音楽でも、絵でも、本でも構いません。今のうちにいろんな窓口を広げておくことは、きっと将来のプラスになります。
そして、もし悩んでいることがあるなら、とことん悩んでいいと思います。ただ時々、「自分は今悩んでいるんだな」と少しだけ冷静に自分を見つめてみてください。
高校では、新しい出会いがたくさん待っています。未来を楽しみにしながら、今を過ごしてもらえたら嬉しいですね。

【編集後記】
「本を読まなくてもいい。ぼーっとしているだけでもいいんです。」
中根先生のこの言葉が、とても印象に残っています。
“図書館”と聞くと、「静かに勉強する場所」「本を読む場所」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、中根先生のお話を聞いていると、鶴ヶ丘の図書館はもっと柔らかく、もっと自由な場所なのだと感じました。
日記を書く。手紙を書く。窓の外を眺めながら考え事をする。本の背表紙を眺める。誰かにそっと悩みを相談してみる。
そんな時間も、ぜひ図書館で過ごしてみてほしいと先生の言葉にありました。
悩みを抱えた時。少し疲れた時。何か新しい世界に出会いたい時。あるいは、ただ静かな時間を過ごしたい時。
鶴ヶ丘の図書館には、そんな人たちをそっと受け入れてくれる空気があります。
この記事を読んでくださった中学生の皆さんも、ぜひ学校見学の際には図書館を訪れてみてください。きっと、本との出会いだけでなく、「自分自身」と出会う時間にもなるはずです。(広報部)
